独立した額縁がふさわしい絵画で一体化

現在の額縁が独立したものとして、一ジャンルを形成していくまでには時間を要したと言われています。額縁の起源とも言われる絵画と一体となった画枠が、それまで絵が描かれていた基材が木からキャンバスに置き換わったことで調度品の一部であるかのように飾り立てられた額縁が表れ始めていったと伝えられています。そうなると絵画と額縁はそれぞれ独立した存在となり、そこから起こるのはその組み合わせにより絵画がいかようにも変わってしまうということでしょう。ところが実際現存する名画と言われるものには、まさにこれしかないと思われる位によく考えられた額縁に収められた絵画とのマッチングに出会うことが度々経験されます。例えば、ロンドンにあるナショナルギャラリー所蔵の作品で18世紀描かれたとされるHyacinthe Rigaud(イアサント・リゴー)作の「Antoine Pâris(アントワーヌ・パリスの肖像)」などは、対象となる財務官アントワーヌ・パリスの寛いだ様子とバックの壁の直線性が額縁の直線と相まって、さらに額縁の中に施された優美な模様と絵の中の優雅さ、そのほかまさにピッタリと思わせる額縁の随所にみられるポイントとなる造型と絵の中の頭や手の相対位置など、絵を見ながら額縁を作ったのではと思わせるような配置具合。この額縁が作品全体のバランスを保てるようどれだけ寄与しているかわかりません。このように独立性という地位を確立した額縁ではありますが、一方で全体として一体化された額縁も存在していたのは紛れもない事実で、それが未だに続く額縁の摩訶不思議なところであると言ってもいいかもしれません。

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