三代目エルメスのエミール・モーリス・エルメスは馬具製造で培った技術やエルメス独特の設計思想を残しながらも、馬具とは全く異なる分野であるファッション商品の製作を開始しました。
この方針決定は極めて勇気のいる決断だったと思います。

当時はまだフランス国外であれば馬具需要は少なくなく、ロシアや南米、日本などではエルメスの馬具は飛ぶように売れていたでしょう。
一方でフランス国内においては馬具の需要は減少しており、何らかの方針転換が急務であったと思います。
そのため三代目エルメスはフランス国内においてファッション分野への進出を決定しました。
現在のエルメスの三本柱の一つとなっている、革で作られたカバンですが、ちょうどこの三代目エルメスの時代にエルメス最初のバックと言われる、「サック・オータクロア」の販売が開始されました。

当時、全く畑違いで合ったファッション分野に進出したエルメス。
しかし、馬具製造で培われた高い技術と、熟練した職人の手作りによる希少性の高さは当時の人々に高く評価されました。
この高い技術と希少性によって生み出されたエルメスは、最高級ブランドであるというイメージは損なわないように、とても丁寧なデザインで、しかしオリジナリティ溢れるエルメスのバッグ作りが始まります。
こうして生み出されたエルメスのバッグは、当時の女性達にファッション革命をもたらしたと言われています。

しかし、順調かに思えた三代目エミールモーリスエルメスの時代には大きな危機が訪れます。
1930年前後に発生した第二次世界大戦と世界恐慌です。
当時のフランスというのは第二次世界対戦が始まってすぐにドイツ軍に侵略され、ほとんど自由な商売ができなくなります。
また、戦時下における物資不足や貧困は当時の富裕層にも直げしたことでしょう。
そのため、エルメスの高級なバッグはほとんど売れなかったと思います。

このような窮地を脱するべく、三代目エルメスは新たな商売を思いつきます。
それは現在のエルメスにおいても重要な商品の一つである、香水とスカーフです。
香水とスカーフが当時のエルメスの窮地を救った理由は主に二つです。

というのもまず香水とスカーフはバッグなどの革製品に比べ単価が非常に低く抑えられます。
しかしそれでいてエルメスの高いブランドイメージと高級感は維持されます。
こうして三代目エルメスは 、エルメスの現在の軸足を作っただけでなく、世界情勢の危機までも乗り切ったのです。

ちなみに、現在エルメスの商品を買った時についてくるオレンジ色の包装紙ですが、これも三代目エミールモーリスエルメスの時代に始まったとされています。